「64」 横山秀夫

64

64


初めて読む作家さん。
こちらも、いろんなランキング上位にある1冊。


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昭和64年に起きたD県警史上最悪の誘拐殺害事件を巡り、
刑事部と警務部が全面戦争に突入。
広報・三上は己の真を問われる。究極の警察小説!


警察職員二十六万人、それぞれに持ち場があります。刑事など一握り。
大半は光の当たらない縁の下の仕事です。神の手は持っていない。
それでも誇りは持っている。
一人ひとりが日々矜持をもって職務を果たさねば、
こんなにも巨大な組織が回っていくはずがない。
D県警は最大の危機に瀕する。
警察小説の真髄が、人生の本質が、ここにある。


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数字がタイトルになっていてとても象徴的だな〜と本屋で見かけ、
図書館にあったので借りようと手に取った時、その分厚さにひるみました。
でも、読み始めてみればなんてことはなく3日かからず読み切り。


非常に骨太な警察小説です。
前半で散りばめられたパーツを後半に一気に回収するのがうまい!
前半は、広報官として一家の長としてのさまざまな矛盾を抱えた三上の
葛藤と彼なりの解決策が、裏目に出る場面が多くてヤキモキします。
ですが、後半に進むにつれて三上の覚悟が見えてきて進みが速くなります。


くわえて、物語の後半で起こる事件が「64」につながってくる瞬間。
前半の不穏な動きや、あの人のあの言葉はこっちの意味か〜!って。


クライマーズ・ハイ」を書いた方だったのですね。
読んでいませんが、先日酒の席で話題に上がってたので読もうかな。
でも、その前にちょっと軽めの本にしよう。

「ふくわらい」 西加奈子

ふくわらい

ふくわらい


西加奈子さん2作目。
キノベス2013の1位になってたので読んでみました。


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マルキ・ド・サドをもじって名づけられた、書籍編集者の鳴木戸定。
彼女は幼い頃、紀行作家の父に連れられていった旅先で、
誰もが目を覆うような特異な体験をした。
その時から、定は、世間と自分を隔てる壁を強く意識するようになる。
日常を機械的に送る定だったが、ある日、心の奥底にしまいこんでいた、
自分でも忘れていたはずの思いに気づいてしまう。
その瞬間、彼女の心の壁は崩れ去り、熱い思いが止めどなく溢れ出す。


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うーん、何とか読み切ったけど。
私はちょっとばかり苦手かも知れません。


2作品しか読んでいないので、他の作品がどうなのか分からないのだけど。
けっこう「うっ…」と目をそらしたくなるような表現もあり。
感想サイトなどを見ている限りでは、加奈子節炸裂!みたいなのもあるので、
わりかし、この人の作品には多いテイストなのかもしれません。


うわうわ〜っと言いながらも読み進めました。
最初は相当変わっているなと思う主人公の定が、
周りの人々の影響もあって、変わっていくのは面白い。
彼女自身の生い立ちもさることながら、周りの登場人物も変わっている。
変わっているという言葉では表わしきれない、不思議な人々。


読み終えてみると、案外爽快な気分です。
苦手な食べ物をちゃんと食べきった達成感のような?(笑)
でもしばらくはいいです、他の人の読もう。

「悶絶スパイラル」 三浦しをん

悶絶スパイラル (新潮文庫)

悶絶スパイラル (新潮文庫)


久々の三浦さんエッセイ。


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作家の一日は忙しい。
連載の〆切に追われ、打ち合わせをこなし、
合間を縫って、脳内政界ラブロマンスに思いを馳せ、
タクシー運転手さんにモテ女を演じ、
ジョジョTを着てホテルのラウンジで止められ、
野球場のゲイカップルをやっかみ、エビ天に似たチクワ天に怒りを覚える。
キャラの濃すぎる家族や友人らに囲まれ、
妄想アドレナリンは今日も絶賛分泌中!大人気エッセイシリーズ。


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やー、今回も笑った。
電車の中で、何度もむせたわー。
マスクしてたけど相当あやしい人物になってしまった(笑)


なんでこんなにも面白い日常なのだろう。
というか、私がまわりにもっともっとアンテナ張ればいいのか?


週一の連載はとうの昔に終わっちゃったらしいけど。
そりゃ、忙しいもんねエッセイ書いてる余裕ないっすよね。
でもいつかまた、書いてもらえるとうれしいのであります。

「エンジェル・フライト」 佐々涼子

エンジェルフライト 国際霊柩送還士

エンジェルフライト 国際霊柩送還士


図書案内に出ていて気になったので、手にとりました。


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ママが遺体にキスできるように。それが彼らの仕事。
国境を越えて遺体を家族のもとへ送り届けるのが国際霊柩送還士の仕事。
日本初の専門会社で働く人々と遺族の取材を通して、
筆者は人が人を弔うことの意味、日本人としての「死」の捉え方を知る。


運ぶのは遺体だけじゃない。
国境を越え、“魂”を家族のもとへ送り届けるプロフェッショナルたち。
2012年第10回開高健ノンフィクション賞受賞。


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てっきりフィクションだと思って読んでんみたら、ルポでした。
だから、出だしは「んん??」となってしまったのですが。
あぁこれはルポなのねと気づいてからは頭切り替えて読めました。


手に取ったきっかけは、かつて私も海外に住んだ経験があったから。
あまり、「死」について深く考えもせずに渡ったけれど、
私だってここに出てくる人のようになっていたかも。
そして、大切な友人のお父様が2年前に外国で亡くなったから。
(私も、お父様に良くしてもらっていたのでショックでした)


ここのところ海外で起こる不幸な事故が多く報道されている。
そんな中で、亡くなった方の棺はどう運ばれるのかなと思っていたのです。


エンバーミングの処置などのシーンは気迫がありました。
そして、そこに込められた社員の思いなども胸に迫る。
日本に数少ない、彼らのおかげで最後の瞬間を迎える遺族たち。
決して日の目を見る仕事ではないけれど、その存在を知ることができて良かった。


著者自身のエピソードはちょっと蛇足だったかなと。
なくても十分すぎるほど面白い仕事のルポでした。

2月ベスト。

月間ベスト2月篇。


2月は、ハイペースで11冊でした。



さて、2月ベスト。


楽園のカンヴァス

楽園のカンヴァス


こちらです。
とっても良かったのです。
アンリ・ルソーの幻の絵画をめぐる話。
現代を生きる人々と、あの時代パリを彩った人々。
それらすべてが複雑に絡み合って素敵な1枚の絵が出来上がったようでした。


次点は。


六の宮の姫君 (創元推理文庫)

六の宮の姫君 (創元推理文庫)


こちら。
シリーズを読み切ったのも2月頭でした。
この作品は、文学ミステリー。
論文っぽくて難しかったけれど、読みとおせたので頑張った大賞です(笑)


さて、3月はどれくらい読めるかな。
とりあえず手元にあるハードカバーから片付けよう。

「ケルベロスの肖像」 海堂尊

ケルベロスの肖像

ケルベロスの肖像


ものすっごい久々の海堂尊さん。


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「東城大学病院を破壊する」―送られてきた一通の脅迫状。
田口&白鳥は病院を守ることができるのか。
エーアイセンター設立の日、何かが起きる。
愚痴外来の医師・田口公平&厚生労働省の変人役人・白鳥圭輔の凸凹コンビが
大学病院内で次々に起こる難事件に立ち向かっていく、
大人気メディカル・エンターテインメント・シリーズ、いよいよフィナーレ。


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えっと、久々すぎてワールドに入り込むのに時間かかった。
人物関係とか、過去の出来事とかひっちゃかめっちゃか。
いちおう、頭を整理しながら読んだけど…。
結構大変でした、「アリアドネの弾丸」読んだの3年近く前だもんなぁ。
しかも、スピンオフの「螺鈿迷宮」や「ブラック・ペアン」シリーズ
まで出てきちゃって…そんなには覚えてないっつーの(笑)


一応、田口・白鳥シリーズはこれにて終了らしいですが、
「桜宮サーガ」はまだまだ続くようですね。
この方の作品は好きなので、文庫版を古本屋で集めていこうかなぁ。

「楽園のカンヴァス」 原田マハ

楽園のカンヴァス

楽園のカンヴァス


知りあいの方が、レビューで絶賛していたのが気になって。
借りてすぐに読んでしまいました。


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ニューヨーク近代美術館学芸員ティム・ブラウンは、
スイスの大邸宅でありえない絵を目にしていた。
MoMAが所蔵する、素朴派の巨匠アンリ・ルソーの大作『夢』。
その名作とほぼ同じ構図、同じタッチの作が目の前にある。
持ち主の大富豪は、真贋を正しく判定した者に作品を譲ると宣言、
ヒントとして謎の古書を手渡した。
好敵手はルソーに関する斬新な論文を発表している早川織絵。
リミットは七日間―。ピカソとルソー。
二人の天才画家が生涯抱えた秘密が、いま、明かされる。


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大原美術館、去年行きました。
なので、冒頭のエル・グレコのシーンも実感ありでした。
ひとは少ないので、受胎告知をじっくり見られたのが良かったです。


そして一昨年の夏はNYのMoMAに行きました。
そう、この作品の主題『夢』を実際に見ているのです。
なんとも言えない不思議な魅力を持つ作品で、
胸の中がザワザワすると、本作にも書かれていましたが、
形容し難い感覚が胸に広がって、動けなくなったのは確かです。


MoMAは写真撮影ができたので、ばっちり写真に収めてありました。
(収めたよな…?とデータを確認したけど…)
以下がその写真です、全部収めきれてないのが残念だけど。



一昨年から、展覧会めぐりを趣味にしているので、
アンリ・ルソーの作品は他にもいくつか見てきました。
絵のタッチや、構図が「気になる」存在だったんですね。
「ルソー」といえば、『社会契約論』のジャン・ジャック・ルソーな私。
そのルソーではないよな、くらいの知識でこの本に臨んだわけです。


本作はそのルソー作品をめぐる絵画ミステリーです。
美術館の監視員、キュレーター、研究者、オークショナー、
稀代のコレクターとその弁護士…など、
美術にかかわる仕事がいろいろと出てきて面白い。
そして、その彼らが傾けるルソーへの情熱が美しい。


作中に出てくる、ルソーにまつわる物語も面白い。
ルソーを知っている人には当然かもしれないけど、無知な私にとっては
なるほど〜、そういう人生を送った人なのかぁ…と勉強になる。
そこに出てくる画家や詩人、1900年代初頭のパリを彩った人々。


なかでも、ピカソとの関連。
どこまでが史実でどこからが創作部分なのかは分かりませんが、
ルソーがピカソに影響を与えたことは確かなんだろう。
ゾクゾクしました、本当の話だったら凄すぎる!とまで思えます。


ラストにかけて広げたピースがつながっていく感じがたまらないです。
読み終えて、ほぅ…っとため息をついてしまいました。
絵画をめぐる物語がこんなに面白いとは思いませんでした。
最近、書物や絵画絡みの本が楽しいと感じるようになったせいかもしれません。
ミステリーやエンターテイメントとして楽しめるのに加えて、
いろんな作品の背景なんかが勉強できて一石二鳥のお得感。


作者の原田マハさんはルソーとピカソがお好きなのかと思ってましたが、
彼女自身が美術専攻で、いくつかの美術館に関わっていたみたいです。
しかも、MoMAにも勤務していたとか。
まさに本領発揮の本作だったのですね〜、
これからまた、絵画にまつわる作品をまた書いてくれないかな!


アンリ・ルソーは7月からの「プーキシン美術館展」に
作中で出てきた「詩人に霊感を与えるミューズ」が来るらしい。
横浜美術館、ちょっと遠いけど見に行こうかな。
そして、この本は、美術好きの友人に紹介してみよう。