「つるかめ助産院」 小川糸

つるかめ助産院 (集英社文庫)

つるかめ助産院 (集英社文庫)



9月の最初の1冊。
やっぱり通勤時間があると、読みがはかどります。
ドラマ化されたので、読んでから見ようかと思って手にとりました。
1日で読み進めてしまった。



夫が姿を消して傷心のまりあは、一人南の島を訪れる。
そこで出会った、助産院長から予期せぬ妊娠を告げられる。
家族の愛を知らずに育ったまりあ。
新しい命を身ごもったことに戸惑いを隠せない。
南の島の個性豊かな仲間と触れ合ううちに、
少しずつ孤独だった過去と向き合うようになる。



やはり、この方の書く食事シーンは素晴らしい。
味を想像しては、唾がジワーンと広がる感覚が何度も。
特に、最初のパクチー嬢のパクチー尽し料理!


この助産院は育むことのできる女性の理想の結晶。
子供が生まれるって、本当に奇跡なのだなぁと。
助産院ではいろんな出産シーンが出てきます。
つまりは命・そして親子が出てくるわけです。
何とも不条理なニュースが飛び交う世の中ですが、
こういう暖かな命の誕生の瞬間があることを忘れたくない。


だけど、まりあの夫の謎だけが残る。
あえて謎のままにすればそれはそれで形として良かったのに。
あと、せっかく出した登場人物の形成が中途半端なのが惜しい。
倍は書けたんじゃないだろうか。
出産事情をきちんと調べてらっしゃるようなので、もっと生かせればなと。


いつか私も子を育み、この世に送り出す日が来る(はず)
その時に、またこの本を読んで命を愛おしみたいな。



※ドラマは設定が多くの部分で異なるので見ませぬ。
パクチー嬢が出ないなんて!