「サウス・バウンド」 奥田英朗

サウスバウンド 上 (角川文庫 お 56-1)

サウスバウンド 上 (角川文庫 お 56-1)


サウスバウンド 下 (角川文庫 お 56-2)

サウスバウンド 下 (角川文庫 お 56-2)



父が会社員だったことはない。
物心ついたときからたいてい家にいる。
父親とはそういうものだと思っていたら、
ほかの家はそうではないらしいことを知った。


型破りな父親に振り回される家族を少年の目線で描いた作品。



主人公の少年は、どこにでもいそうな男の子だけれど、
彼なりに友達を想い、家族を思う姿がとてもさわやか。
思春期に入ったばかりで、善悪の基準もまだまだはっきりしない。
というか、その手本になるはずの父親が超過激。


上巻は、主人公の小学校での出来事を中心に、
1つ上の学年が怖いとか、異性を意識し始めるという
あのころを思い出させるような、懐かしい気分。
と、ともに、自分の家族の秘密が見え隠れする。
働かない父親に対する恥ずかしさ、母と姉の抱えるもの。


下巻は東京の家を離れて、八重山での自給自足生活。
電気もなく、食料も島の人々に分けてもらう生活。
その中で、急に父がたくましく見える瞬間が来る。
東京では、どうしようもなかった父のことを、
八重山での出来事を通じて、尊敬するようになる。


全編通して、さわやかな少年の筆致で読みやすかった〜。
本屋大賞2位に納得です。