「冷たい校舎の時は止まる」 辻村深月

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)


冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)



辻村深月さん。
書店などでよく見かける人だなぁと気になってました。
デビュー作がこれだということで、やはりここから。


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ある雪の日、学校に閉じ込められた男女8人の高校生。
どうしても開かない玄関の扉、そして他には誰も登校してこない。
そして、8人全員が投降したところで時が止まった校舎。
不可解な現象の謎を追ううちに彼らは学園祭での自殺事件を思い出す。
しかし8人は死んだクラスメートの名前が思い出せない。
死んだのは誰!? 


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1000ページを超える大作、一気読みでした。
人気のない建物って、恐ろしいもんですよね。
私も仕事で最後になって出る時は、ちょっとドキドキします。
その舞台が、学校ときたら…恐怖は割増ですなー。


上巻前半は、異様な状況に放り込まれた8人が
あーでもない、こうでもないと知恵を振り絞って脱出を試みる。
だけど時が止まってしまった校舎内では、感覚がマヒしてゆく。
この間に、みんなが思い出せない自殺した生徒の話も出る。
話していくうちに、「この中の誰かが自殺をしたのでは…」と疑心暗鬼になる。


後半は、突然鳴り響くチャイムとともに8人のうちの1人が消える。
上巻の後半はなかなか怖かったです、「こわ…」と何度もつぶやいた。
ひとり一人、追い詰められる過程で、自分の過去と対峙することになる。
その過去は、前半部分には出てこない登場人物たちのダークな1面。


下巻に入っても、得体のしれない恐怖が付きまといますが
3分の1くらい読むと、上巻ほどの怖さは感じなくなる。
それ以上に「自殺したのはいったい誰なんだよ」という疑問。
まぁ、この人なんだろうなぁと思って読み進めるのだけど
いまいち確証を持てないまま、話は進んでいきます。


そうして、下巻の後半に入って自殺した人物が判明。
私は、見事に作者の術中にハマってたのでしょう。
分かった瞬間、「おまえかーーーー!」と言いました(笑)
そうして、長らく展開されてきた話のカラクリが明かされます。
「あぁー、そこか!」「そういう意味だったのね」と思わず出ちゃう。



上巻での得体のしれない恐怖はどこへやら、読後感は良かったです。



気になったのは、出てくる人がみんないい人すぎること。
抱えている闇はそれぞれにあるにせよ、言ってしまえばみんないいやつ。
一人、どうしようもない悪者がいてもいいはずなのに。
あと、メインキャラが作者と同じ名前であることにどんな意味があったのか。
最後までそこが見いだせないままでした、他の名じゃダメなのかな。



まぁ、楽しかったです。
先が気になって、一気読みしちゃったし。
ただ、多くの感想にあるように話が長すぎる。
そこさえ気にならなきゃあとはまぁいいかな。