「偉大なる、しゅららぼん」 万城目学

偉大なる、しゅららぼん

偉大なる、しゅららぼん



久々の万城目学さん作品。



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高校入学をきっかけに、本家のある琵琶湖の東側に位置する石走に来た涼介。
本家・日出家の跡継ぎとして、お城の本丸御殿に住まう淡十郎。
彼の“ナチュラルボーン殿様”な言動にふりまわされる日々が始まった。
ある日、淡十郎は校長の娘に電撃的に恋をする。が…。
彼女は日出家のライバルで同様に特殊な「力」をもつ棗広海が好きだと分かる。
恋に破れた淡十郎は棗広海ごと棗家をこの街から追い出すと宣言。
両家の因縁と三角関係がからみあったとき、力で力を洗う戦いの幕が上がる!


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あらすじだけ見るとすごい話のような気がするけど。
そこは、万城目ワールドなので重苦しくはなりません。


前半は、ナチュラルボーン殿様な淡十郎のはちゃめちゃライフ。
制服の色から、自分を馬鹿にしたやつへの制裁までむちゃくくちゃ(笑)
でも、彼の一貫した考え方は決して変わらない。
「僕がやると決めたら(それがいかに世間の道徳からずれていようと)やる。」
涼介はその言動に振り回されまくりますが、ある意味かっこ良い存在。
長年対立した棗家の長男・棗広海と淡十郎の三角関係????


後半戦は、とある人物が城にやってきたことによって引き起こされる。
それまで対立してきたはずの日出と棗が手を取り合わなければ立ち向かえない。
その中で、「しゅららぼん」が出てくる原理が分かったりするわけですが。
琵琶湖が割れるくだりなんて「モーゼか!」と叫びたくなる。
でも、それさえも絶妙なバランスで読み手を引き込む要素にするんだなぁ。


ラストに向けて、事の真相が明らかになると何とも言えなくなる。
怒りの矛先をどこへ向けていいのか、だれが本当に悪かったのだろうか。
そんな思いに駆られながら、最後の決断を下した彼はかっこよかった。
そうしてやってきたエピローグは、その始まりと同じようで違う。
失ってしまったものを取り戻したい一心の主人公たちのもとへ。
本当に最後の部分で書かれなかったことが、読者の心に余韻を残す。


和製ハリーポッター!?とツッコミを入れたくなるようなシーン満載。
中盤あたりを読んで、すぐ寝ようと思ったのに読み切ってしまった(笑)
奇想天外な発想をまとめ上げる万城目ワールド、この先も気になります!