「ビブリア古書堂の事件手帖4 〜栞子さんと二つの顔〜」 三上延


発売して即手に入れてしまいました。
こう書くと大ファンみたいですな〜(笑)


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珍しい古書に関係する、特別な相談――
謎めいた依頼に、ビブリア古書堂の二人は鎌倉の雪ノ下へ向かう。
その古い家には驚くべきものが待っていた。
稀代の探偵・推理小説作家、江戸川乱歩の膨大なコレクション。
それを譲る代わりに、残された精巧な金庫を開けてほしいと持ち主は言う。
金庫の謎には乱歩作品を取り巻く人々の数奇な人生が絡んでいた。
そして、迷宮のように深まる謎はあの人物までも引き寄せる。
美しき女店主とその母、謎解きは二人の知恵比べの様相を呈してくる――。


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今回は、全編にわたって江戸川乱歩
今までが1話完結型だったのが、今回は長編になるのかな。
3冊取り上げられて、それを軸に話はめぐってゆく。


そして今まで、謎に包まれていた栞子さんのお母さん智恵子さん。
彼女に触れるシーンが増えるのも今までにないですね。
彼女が出れば出るほど、薄気味悪さを感じます。
古書に関してどれだけ膨大な知識を持っているのだろう…。
それに、そこから正確に人となりをあてる芸当。
この後も彼女に関する話は続くのでしょうけど。


今後の展開はどうなるのだろうなーと気になります。
終盤に差し掛かっているそうなので、あと2冊くらいで完結かな。
次は短編で、いろんな本を紹介してください。


あ、ドラマは一切見ていません。
これは、小説で楽しみたいなともうので。

「空飛ぶ広報室」 有川浩

空飛ぶ広報室

空飛ぶ広報室


さて、久々の有川浩さん。
こちらもテッパンの自衛隊ものです。
テンポの良さは相変わらず。


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不慮の事故でP免になった戦闘機パイロット空井大祐。
転勤した先は防衛省航空自衛隊航空幕僚監部広報室。
待ち受けるのは、ミーハー室長の鷺坂(またの名を詐欺師鷺坂)、
尻を掻く紅一点のべらんめえ美人・柚木、
鷺坂ファンクラブ1号で「風紀委員by柚木」の槙、
鷺坂ファンクラブ2号の気儘なオレ様・片山、
ベテラン広報官で空井の指導役・比嘉など、
ひと癖もふた癖もある先輩たち。


加えて、テレビ局ディレクターの稲葉リカが現れて…?


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空井くんが、あまりにもいい子です。
夢敗れた主人公っていうポジションだと思うのですが。
腐ってないんですよね、普通もっとやさぐれないか?と。
物分りがよすぎるというか、切り替えが早いのですかね。
時間もそれなりに流れているし、日々仕事はあるわけだし。


個人的には、べらんめえ美人・柚木と槙のコンビが好きです。
有川的フラグをバシバシ感じる2人でした。
柚木が職場でされることは、女性なら経験多いかも。
とくに、女性への扱いが慣れていない職場…
もっといえば、古典的な考え方にとらわれやすい職場に。


あまり知られていない自衛隊の仕事の内容や、
仕事そのものへの向き合い方というのはいつも参考になります。
でも、お約束の展開もあってちょっと食傷ぎみです。


それでも、最後「あの日の松島」は良かった。
自衛隊ものを書いていて、あの日のことをこういう視点で
書ける人というのは有川さんならではと思えました。


ちなみに、ドラマ化されるそうで。
空井くんは綾野剛くんが演じるんですってね〜。
最近注目株なので、ドラマ見ようかなぁ…。

「ペンギン・ハイウェイ」 森見登美彦

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)


森見氏久々だ〜。
読みかけで、本をどこかへやってしまうという失態。
最近発掘されたので、ようやく読み切りました。


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ぼくはまだ小学校の四年生だが、もう大人に負けないほど
いろいろなことを知っている。
毎日きちんとノートを取るし、たくさん本を読むからだ。
ある日、ぼくが住む郊外の街に、突然ペンギンたちが現れた。
このおかしな事件に歯科医院のお姉さんの不思議な力が
関わっていることを知ったぼくは、その謎を研究することにした―。
少年が目にする世界は、毎日無限に広がっていく。


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森見さんの作品としてはかなり珍しく、舞台が京都でない。
架空の街、イメージは郊外のベッドタウンかな。


主人公も小学4年生のアオヤマくん。
とっても好奇心の旺盛な少年です。
小学生としてはかなり賢くて、いろんなことを調べて研究している。
だけど、人の心の機微はまだ分からない幼さがところどころに見える。


お姉さんは歯科医院につとめている、どこか不思議な空気を持つ人。
やがて少年アオヤマくんはお姉さんの秘密を知ることになります。


その秘密を解き明かすとき、一つの崩壊がおとずれる。
ラストが、アオヤマくんの夢オチとか森見さんお得意の妄想だったら…と
中盤で不安になったのですが、そんなことはなかったので良かったです。


読み終えた感想としては、
スタンド・バイ・ミー」と「ハリー・ポッター」の掛け合わせ?
アオヤマくん、ウチダくん、ハマモトさんの3人はハリーを思い出すし、
夏休みを中心とした冒険は、スティーブン・キングのそれっぽい。


アオヤマくんは賢すぎる気もしますが、とても愛おしく感じます。

「妖の華」 誉田哲也

妖の華 (文春文庫)

妖の華 (文春文庫)


誉田哲也さんを連続して読みました。


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ヒモのヨシキは、ヤクザの恋人に手を出して半殺しにあっていた。
そこを、妖艶な女性に助られる。
同じころ、池袋では獣牙の跡が残る、完全に失血した惨殺体が発見された。
その手口は、3年前の暴力団組長連続殺人と酷似していた。
事件に関わったとされる女の正体とは?
「姫川」シリーズの原点ともなる伝奇小説が復刊。
第2回ムー伝奇ノベルス大賞優秀賞受賞作。


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これが、デビュー作だそうです。
姫川シリーズに出てくる井岡が!!
女性に対して超失礼なのは、姫川シリーズ本編と変わらない(笑)
姫川シリーズ中でも、不思議な勘をもっていたなぁって思うけど。
この作品では、井岡の動物的勘が冴えわたっていますね〜。


誉田氏の警察小説は、刑事が追っている相手の手に落ちることがあるけど、
これもある意味、一人の刑事が向こう側に落ちてゆきます。
話の筋書きはSF仕立てだけど、根幹にあるものが似ているかなと。
グロテスクな表記、登場人物がジャンジャン死ぬのも初期のころからなんですね。
容赦ない感じが、この人の作品にはいつもあります。


その一方で、直前に読んだような青春小説も書けるのだから
やっぱりこの人の作品から今後も目が離せません。
もう1冊、積読があるけど続けて読もうかな…どうしよっかなー。


余談ですが、この小説の表紙の妖艶な女性の姿を
今話題の○蜜さんみたいと思ってしまって、
メインで出てくる女性を彼女に重ねて読んでしまいましたとさ(笑)

「世界でいちばん長い写真」 誉田哲也

世界でいちばん長い写真 (光文社文庫)

世界でいちばん長い写真 (光文社文庫)



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内藤宏伸は中学三年生。
去年まで大の仲良しだった洋輔が転校したことで、すっかり塞ぎ込んでいた。
やりたいことも、話したい相手もみつからず、すべてがつまらない。
写真部にはいちおう籍をおいているけれど、
部長の三好奈々恵に作品提出を迫られるけど、撮りたいものもみつからない。
そんなある日、祖父の経営する古道具屋で、一台の奇妙なカメラを見つける。
それは、台座が一回転して、三六〇度すべてを一枚の長い写真に納められる
という風変わりなものだった。
カメラとの出会いをきっかけに、宏伸は「世界で一番長い写真」を撮りたい
という思いを抱き始める。
でも、それだけの長さ、撮りたいと思える被写体って、なんだろう?!


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誉田哲也氏の青春小説。
むちゃくちゃさわやかです。


やりたいことの見つからない中学生や高校生ってこんな感じなのだろうな。
無気力ってわけじゃなくて、でも何に自分が向いているか分からなくて。
もやもやしている感じが、かわいらしいな〜、ファイト〜って言いたくなる。
その分、被写体が決まってから、その写真撮影までの日々は愛おしいです。


しかし、「ハング」や「ヒトリシズカ」などのハードな小説を書くひとから
どうしてこんなにもさわやかな青春小説が出てくるのか不思議でならない。
これを書いている現在、氏のデビュー作「妖の華」を読んでいるので
なおさらそのギャップに戸惑うばかりです(笑)

「禁断の魔術」 東野圭吾

禁断の魔術 ガリレオ8

禁断の魔術 ガリレオ8


2作品続いてガリレオ


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草薙に連れられていったクラブのホステスは、透視能力がある?
そのカラクリにガリレオが挑む。(「透視す」)
引退に追い込まれた野球選手の妻が殺された。
亡くなる直前に彼女が持っていた贈り物の謎。
野球選手の再生は科学の力でできるのか?(「曲球る」)
双子の姉の危機を察知した妹、辛くも姉は一命を取り留めた。
テレパシーは本当に存在するのか?
湯川はなぜ、テレパシーに興味を示したのか?(「念波る」)
天涯孤独となったかつての教え子が犯罪に手を染めようとする。
その姿を見たとき、湯川のとった行動とは…?(「猛射る」)


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3作品は、科学捜査というよりは動機の解明に近い。
ちょっと加賀恭一郎シリーズっぽさもある。


最後の作品「猛射る」は久々にぞくぞくしました。
去年読んだ「真夏の方程式」を彷彿させるような作品。
<教え子との関係性>というのがとても似ていました。


自分の教え子を徹底的に信じぬく心。
忘れちゃいけないなと思います。
その姿勢こそが、勉強を教えることよりも
もっとずっと大切なことかもしれない。


最初は、科学の世界に生きる変な学者だった湯川が
長年の作品を通じて人間味を帯びてきて、
教育者としての姿を最後はこれほどまで熱く見せてくれた。


しばらくはお休みっぽいですが、
またの機会にぜひ描いてほしいなと思います。

「虚像の道化師」 東野圭吾

虚像の道化師 ガリレオ 7

虚像の道化師 ガリレオ 7


ガリレオシリーズの新作が2作品、去年刊行されました。
読みたいなーと思っていたら、古本屋で見かけたのですかさずゲット。


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ビル5階にある新興宗教の道場から、信者の男が転落死した。
教祖は自分が強い念を送って男を落としてしまったと自首してきた。
教祖の“念”は本物なのか?(「幻惑(まどわ)す」)
突然暴れだした男を取り押さえようとして草薙が刺された。
逮捕された男は幻聴のせいだと供述した。
幻聴の正体とは――(「心聴(きこえ)る」)
友人の結婚式のために、山中のリゾートホテルにやって来た湯川と草薙。
ところがホテルからさらに奥に行った別荘で、夫婦が殺されているとの通報が。
現場写真を見た湯川は、おかしな点に気づく(「偽装(よそお)う」)。
劇団の演出家が凶器は芝居で使う予定だったナイフで殺害された。
だが劇団の関係者にはみなアリバイがあった。
湯川は、残された凶器の不可解さに着目する(「演技(えんじ)る」)。


読み応え充分の4作を収録。湯川のクールでスマートな推理が光る、
ガリレオ短編集第4弾。


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安定感のある作品ですが、最初のころの新鮮な感動は少なくなったかな。
脳内で、福山雅治さんが動いているので幸せなひと時ではありますが(笑)
ある程度極めてしまった感じはあるのかもしれませんね〜。